東京高等裁判所 昭和27年(う)179号 判決
按ずるに、およそ投票ということは、特段の事情のない限り、一個の行為によつて一票を投ずるものであるから、公職選挙法第二三七条第二項に規定する詐欺投票罪が一個の行為にして数個の罪名に触れる場合として刑法第五四条第一項前段の規定を以て処断するに当つては、右特段の事情に該る事実を認定説示する所がなくてはならない。
しかるに、原判決は、被告人に対して法令の適用を示すに当り、その中に刑法第五四条第一項前段の規定を掲げているのに、原判示事実、殊に原判示第一の(四)の事実においても、右特段の事情に該る事実を認定説示する所はない。してみれば、これ、判決の理由にくいちがいがあるか、若しくは、法令の適用に誤があるものといわなくてはならないそこで、論旨第二点はおのずから理由あるものというべく、原判決はこの点において、とうてい破棄を免れない。
なお、被告人鈴木善治の詐欺投票幇助の事実を摘示するに当つても、原判決は、正犯につき右特段の事情に該る事実のあつたことを認定説示する所なくして、漫然と刑法第五四条第一項前段の規定を適用して同被告人を処断しているので右破棄の理由は、控訴をした同被告人に共通であるから、同被告人のためにも原判決を破棄しなければならない。